こんにちは。ゆじろです。
釣りから帰った日の夕方、丁寧に開いて塩水に漬け、一夜干しにしたアジ。
自分の手で作った新鮮な干物を焼いて食べることができるのは、釣り人だけに与えられた特権だ。
さらに干物のメリットは保存が利くことも挙げられる。
私自身もここ最近干物作りにハマった一人で、釣果があると、刺身以外に食べきれない分も干物にしている。
ところが、だ。「食べきれない分は冷凍しておこう」と冷凍庫に入れた干物を数週間後に取り出したら、表面が黄色く変色し、焼いてもパサパサ。
おまけに脂が酸化してチーズのような臭いが……そんな経験はないだろうか。
手間ひまかけた干物ほど、冷凍庫の中で静かに劣化してく。

今日は、この「冷凍焼け」「冷凍乾燥」という自作干物最大の敵への対策として、家庭用真空パック機「マジック鮮度」を使った保存方法をご紹介したい。
問題の本質:敵は低温ではなく「空気」
「うちの冷凍庫が古いからかな」と冷凍庫のせいにしたくなるが、実は冷凍焼けの本質は冷凍庫の性能ではない。
原因は食品と空気が触れ続けていることにある。
ラップでぴったり包んで、フリーザーバッグに入れて……という定番の方法でも、袋の中には必ず空気が残る。
このわずかな空気が、数週間かけて干物の水分を奪い、脂を酸化させていくのである。
敵は低温ではなく、袋の中に残ったわずかな空気。
冷凍焼けが起きる3つの原因
原因1:乾燥(水分の昇華)
意外に思われるかもしれないが、冷凍庫の中は砂漠よりも乾燥した環境である。
空気は冷たくなるほど水分を抱えられなくなるため、マイナス18℃の庫内はカラカラの状態になる。
冬場に乾燥しているのと同じイメージである。
食品を凍らせると、食品中の水分は氷に変わる。
ふつう氷は「溶けて水になってから蒸発する」と思いがちだが、実はこの乾いた冷凍庫の中では、氷が水を経由せず、凍ったまま直接水蒸気になって抜けていく。この現象を「昇華」と呼ぶ。
冬の寒い朝、干していた洗濯物がカチカチに凍りながらも、いつの間にか乾いているのと同じ仕組みである。
こうして食品の水分が少しずつ奪われ、抜けたあとには細かなすき間が残る。
冷凍焼けした表面が白っぽくスカスカに見えるのは、このためだ。
豆腐を冷凍するとスポンジのようになるが、あれと同じことが、目に見えない規模で起きるのである。

そして干物は、この乾燥がとりわけ痛手になる食品である。
もともと干物は魚に含まれる水分を飛ばし、旨みをぎゅっと凝縮させて作る。
そこからさらに冷凍庫で水分が奪われると、焼いても身がふっくらほぐれず、パサパサに硬くなってしまう。
これが「冷凍焼け」と呼ばれる状態である。
せっかく手間をかけて仕上げた旨みが、冷凍庫の中で静かに抜け落ちていくのだ。
原因2:脂の酸化
アジやイサキなど旬の魚には、体に良いとされるDHAやEPAという「良質な脂」がたっぷり含まれている。
ところがこの脂は、おいしくて栄養がある反面、とても「サビやすい(=酸化)」という弱点を持っている。
金属が空気に触れてサビるのと同じように、魚の脂も空気中の酸素に触れると酸化し、少しずつ劣化していく。
やっかいなのは、この酸化がドミノ倒しのように広がる点だ。
脂の一部が酸化すると、それが隣の脂を巻き込み、次々と連鎖して劣化が進んでいく。
そして酸化した脂からは、あの独特の「古い魚の臭い(チーズ臭)」が生まれ、見た目にも黄色く変色していく。

しかも干物は、酸化がとくに進みやすい食品である。
なぜなら開きにして表面積が広いぶん空気に触れやすく、味付けの塩も酸化を後押しするからである。
さらにこの酸化は、冷凍庫の低温でもほとんど止まらない。
凍らせても、酸素がある限り脂は静か酸化が進んでいく。
原因3:温度変動による再結晶
三つ目の原因は、冷凍庫の「温度の上がり下がり」である。
家庭の冷凍庫は、扉を開けるたびに外の暖かい空気が入り込み、庫内の温度が少し上がる。
すると食品中の氷がほんの少し溶け、扉を閉めて温度が下がると再び凍る。
日々の開け閉めのなかで、食品はこの「溶けて、凍って」を何度も繰り返す。
ここで問題になるのが、「溶けたり凍ったり」を繰り返すほど、氷の粒がだんだん大きく育っていくことである。
小さな氷がいくつも集まって、大きな氷のかたまりへと成長していくイメージだ。
そしてこの育った氷の粒が、魚の身の細胞をまるで内側から押し広げるように壊してしまう。
細胞が壊れると、そこに閉じ込められていた旨みや水分の逃げ道ができる。
魚を解凍したときに汁がじわりと流れ出てくる——これが「ドリップ」と呼ばれるものだ。
スーパーで購入したマグロの刺身の下に敷いているスポンジのようなものが、赤く変色しているものもドリップである(血ではない)。
せっかくの旨みが、この汁と一緒に流れ出てしまうのである。
だからこそ、速やかな冷凍と氷の粒を小さいまま保つことが大切になる(市販品の冷凍食品は、急速凍結を行うことで、食品へのダメージを少なくしている)

こうして見ると、冷凍焼けの正体は「乾燥」「脂の酸化」「氷による細胞の破壊」という三つの現象が重なったものだと分かる。
そして干物は、もともと水分を減らして旨みをぎゅっと凝縮させた食品である。
それだけに、冷凍庫の中でさらに乾き、脂が酸化し、細胞が壊れたときのダメージは、ふつうの食材よりもずっと大きく、美味しさを保つには保存状態がカギになる。
解決策:真空パックで空気ごと遮断する
3つの原因(乾燥・酸化・再結晶)のうち、乾燥と酸化はどちらも「空気との接触」が引き金である。
つまり、大敵となる空気を抜いてしまえば冷凍焼けの大半は防げるということになる。
そこで私は、家庭用真空パック機の「マジック鮮度」(東洋プラン)を使っている。
実際に干物の保存に使ってみて感じたポイントは次の通りである。
- 最大真空度60kPa・135Wのパワー:袋がぴたっと干物に張り付くまでしっかり脱気でき、空気の層がほぼ残らない。
- 自動・手動・シールのみの3モード:身の柔らかい一夜干しは、自動で最後まで吸うと身が潰れることがある。手動モードで吸引具合を見ながら止められるのは、干物以外の柔らかい食材まで対象に広げることができる。
- 5段階のシール温度調整:袋の厚みに合わせて溶着の強さを変えられるので、シール不良で空気が戻る失敗が減る。
- 専用のエンボス加工のロール袋:豆アジから大アジの開きまで、魚のサイズに合わせて袋の長さを自由にカットでき、汎用性が高い。厚みもしっかりしており、これまで魚の骨によるピンホール(穴あき)が起きたことはない。
効果は、理屈のうえでも明確である。
冷凍焼けの三つの原因のうち、「乾燥」と「脂の酸化」は、どちらも食品が空気に触れることが引き金であった。
真空パックはその空気そのものを抜いてしまうので、二つの原因を同時に、しかも根っこから断てるわけである。
残る「氷による細胞の破壊」も、袋がぴたりと身に密着することで熱が伝わりやすくなり、金属トレーにのせれば家庭の冷凍庫でも比較的すばやく凍らせられる。
そして何より、いちばんの違いは食べたときに分かる。
ラップとフリーザーバッグで一ヶ月ほど眠らせた干物は、焼くと身がパサつき、場合によっては脂の酸化した「チーズ」のような臭いを感じる場合もある。
ところが真空パックしたものは、時間が経っても脂がのった香りが残り、身もふっくらとほぐれる。
作りたてそのままとまではいかなくても、「あの日の一枚」に近い味を、あとから取り出せる。
これが真空パックの最大の効果だと言える。
今日からできる:自作干物の真空パック手順
- キッチンペーパーで表面を軽く押さえる:干した干物の余分な水分をしっかりと取っておくと失敗が減少する。

- 袋は魚より5cm以上長めにカット:シール代(しろ)が短いと密封が甘くなり、シール不良が起きやすくなる。

- 身が柔らかい魚種は手動モードで:袋が身に張り付いたら吸引を止めてシール。身を押しすぎないない程度に。

- 金属トレーにのせて急速冷凍:凍るまでの時間が短いほど氷の結晶が小さくなり、身へのダメージが減る。

- 釣った日と魚名をラベルに:先入れ先出しで、おいしいうちに食べ切る。

食べるときは、袋のまま冷蔵庫でゆっくり低温解凍するか、急ぐときは袋ごと流水にあてればドリップも最小限で済む。
夕食にするのであれば、朝、冷蔵庫に移して解凍しておくのがお勧め。
気になるコスト
以下、凡その必要なコストを算出した。
なお、真空にかかる電気代と真空包装機そのものは初期投資として計算には含めていない。
あくまで袋代のみで計算している。
ロール(1本 幅20㎝×長さ600㎝)×2本 約2,000円
⇒長さ1㎝あたりのコスト 約1.67円
アジ20~25㎝サイズの場合に必要な袋の長さ約30㎝
⇒1袋あたり約50円
アジは交互にして2匹ずつ包装
⇒1匹あたりの袋代は約25円(=50円÷2匹)
鮮度を保ち美味しい状態で長期保存ができるのであれば、そこまで高いコストではないのではないだろうか。

ちなみに、20~25㎝程度のアジであれば、1ロールで凡そ40匹分を賄える計算になる。
まとめ:干物作りは「保存」までが仕込み
自作干物の冷凍焼け・冷凍乾燥の正体は、①昇華による乾燥、②脂の酸化、③温度変動による氷の再結晶、この三つが重なったものである。
そしてこのうち①と②は、どちらも「空気に触れること」が引き金だった。
つまり空気さえ断ってしまえば、三つのうち二つは根っこから防げるということになる。
真空パックが効くのは、まさにこの理屈による。
マジック鮮度のような家庭用真空パック機は、一台あれば干物だけにとどまらない。
釣ってきた魚の切り身、下味をつけた漬け込み冷凍、さらには釣りとは関係のない普段の作り置きまで、幅広く使える。
例えば、メジナの切り身をタツタ揚げ用に漬け込んだ状態で冷凍しておくのもお勧めだ。
使うほどに、冷凍庫の中の「せっかく作ったのに残念な一品」が減っていく。
せっかく手間ひまをかけて仕上げた干物である。
開いて、塩を振り、風に当てて——そこまで丁寧に作ったのなら、最後の保存というひと手間まで手を抜きたくない。
空気を抜き、おいしさごと閉じ込めてやれば、干物は数週間後もあの日の香りを保ってくれる。
やることはシンプルである。
干物をしっかり冷やし、袋に入れ、空気をしっかりと抜いて速やかに凍らせる。
たったこれだけで、冷凍焼けの悩みはぐっと減る。
次に釣果があったら、ぜひ真空パックを試してほしい。


